ディテール:洗面台

世のアパートオーナーへのメッセージ

いいものにはお金がかかる、それが原理だ。

賃貸を建てる人の多くは初期費用の低減ばかりに関心を持ってしまうが、原理を受け入れて、そのうえでどうしたら家賃の上昇幅を低減できるか、僕は思考を始めた。

賃貸を探す人はこの洗面台があることによって、一日の始まりからここでの暮らしを想像する。

朝起きて寝室の扉を開ける。しんとした吹抜けの階段を下りてモルタル床にたつ。そこにはステンレスのボウルがある。水栓をひねりちょうどいい温度の水が出ると、手ですくってパシャリと顔を洗う。ふかふかしたタオルで顔を拭き、感触が心地よいスイッチを押す。

真鍮の照明が点く、目の前は継ぎ目のない幅広な一枚の鏡だ。それを挟むように配置された上下の透明な窓は、どんな天候から今日がスタートするのかを教えてくれるばかりでなく、季節の移ろいも感じることができる。

「オーナーが暮らしたいレベルの賃貸住宅を提供する」と言葉で説明するのは簡単だ。だけれどそうした賃貸がほとんどないのはどうしてか。採算が悪化するのを懸念しているのだろう。

前ついていたものを新しくしたような、よくある洗面台だと新品を入れれば10万円程度。作り方によって差額は10万円以下には抑えられるが、造作すれば確実に費用は増える。どうすれば家賃に転嫁せずにすむのか。

僕の解は考え方だけー 洗面台からの想像が決め手になるのなら、むしろ造作すべきだ。空室期間の短縮化と広告費用低減を、住まい手に還元する意味を持つ。それは原価率が高く人気がある飲食店だ、宣伝しなくても朝から夜までたくさんのお客でにぎわいなかなか予約が取れない、そんなお店と同じだ。

広告を打ちクーポンを撒けばハイシーズンは団体の予約が入る。けれど、雨の日は客足が少ない、顔馴染みやリピーターの少ないお店と、あなたはどちらに行きたいだろうか。

ましてや食べて消えるものではない。広告宣伝費に費やすか、資産となって残るものに投資するのか、答えは明白だろう。多くの賃貸住宅が建物の価値を見誤り、本質的でない競争に陥っている。だからこそ耐震補強と断熱をした上で、住まい手の暮らしを彩る部分にも挑戦してほしいと思う。

仕様

カウンター タモ集成材 大工造作
洗面器 サンワカンパニー SUS600 カウンタートップ仕様
水栓 ミズタニバルブ工業 リネア混合水栓
照明 コイズミ照明 AH51113
配線器具 神保電器 NK SERIE ピュアホワイト(ガイドランプ無し)

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