はじめに

こんにちは。

空き家断熱賃貸「作り手たちのアトリエ」計画PMの shiroです。

僕は2016年に東京から佐久市へUターンし、軽井沢で家を建て2018年に引っ越しました。

もともと空き家問題やリノベーションには関心があり、御影用水温水路の近くに見つけた画家のアトリエを改装して自宅にするつもりで取得しました。

当時は木造建物の知識不足で、建築家さんに診てもらいましたが結局新築することとなり、素敵な家具や内装がいろいろあったのでReBuilding Center JAPANさんにお願いして引き取っていただいたあと解体したのです。

自宅を建てるため探究し、断熱沼にはまりました。暮らしてみると今までの建物は何だったのかという快適性に驚き、引き続き建築家さんと一緒に法人のオフィスも建設。エコハウスの要素を非住宅施設に転用し木造高断熱で建設したこの建物は2020年に竣工、その意匠と省エネルギー性能が社会の注目を集め見学や取材が相次ぎました。

そんな中オフィスの近所の戸建賃貸で火災がおき、4人の子どもが亡くなってしまいました。12月の夜寒いためか使っていたストーブから洗濯物に燃え移った出来事でした。自宅やオフィスで注目を集めた断熱は、もう何十年も前からやろうと思えばできたことで特別なことはしていません。断熱が良ければ発生しなかった痛ましい結果ですが、この社会はエネルギーをたくさん使い、健康に悪く危険な建物を放置するどころかまだ作り続けています。

この時感じた強い怒りが起爆装置となり、また同時期にオガールエリアで高性能賃貸を案内していただいた印象もあって、建築家さんからの「軽井沢で賃貸を作りたい」という相談を契機にすぐに計画がスタート。2022年に「サステナブル集合住宅 六花荘」が世にでました。

©UEDA Hiroshi

はじめての不動産事業にどきどきしながらプロジェクトを進めましたが、オガールから学んだテナント先付方式を参考とし、結果的には引渡し前に満室。入居のご希望はたくさんいただいたのにお断りする形となってしまい、またペットに対応していないため諦められた方が多かったのも、子どものころから犬と育ち、保護猫と暮らしている僕としては忸怩たる思いがありました。

このような賃貸住宅はもっと必要とされている、次はペット対応の仕様で提供したい、そう考えましたが六花荘がタイミング的にかろうじて免れた建材価格や工事費用の上昇はすさまじく、賃貸新築なんてできそうにありません。

その時、思いだしたのです。かつて古い建物を改修して自宅を作りたかったことを。当時は住宅の知識経験がなく直せない建物を買ってしまいましたが、繰り返し探究しリスクを負って3回建てた後では木造の耐久性に対する知識、断熱性能の計算ノウハウ、そして自分でできないことも誰を頼ればうまくいくのか経験があります。

いまならできる、そう確信して建物に価値はつかず土地として販売されていた築35年の空き家を取得し、耐震性と断熱性を高める性能向上リノベーションをして「空き家断熱賃貸」を作ります。

このプロジェクトは、ペットに対応しつつ絵、花、服飾、木工など、製作者が気を使わず活動できるようコンクリートやタイルの床、素材そのままの内装にするという建物の特徴に加えて、「ないものは作ればいい」という姿勢や、自分が考える理想の未来を作っていきたいと考え「作り手たちのアトリエ」と名付けました。

空き家断熱賃貸は、以下の課題を同時に解決すると思います。

住む人にとって「光熱費が安く、健康的で安全」
オーナーにとっては「収益が安定し、維持費が低廉」
地域にとって「景観が良くなり、地域経済が活性化」
社会全体にとっては、「国富の流出を止め、ストックを活用」

なにより現在人類が抱える最大の課題「脱炭素社会への移行」に、生産時と利用時の両面から大きく寄与できます。

空き家断熱賃貸を作る人、暮らす人が増えて広まっていくといいなあと思います。