ほくほくを初めて知ったのは、日本エコハウス大賞2022の番外編イベントでした。
僕が暮らしと建築社須永夫妻と進めたプロジェクトで(サステナブル集合住宅六花荘)新築部門を受賞したこの年は、3年ぶりの開催となったため非常な激戦となり、その影響でいくつかの素晴らしいプロジェクトがノミネート(大賞受賞候補)から漏れていたそうです。
選考は複数の審査員による投票によって先に進めるかが決まるため、投票の配分によってはそういうこともあり得ます。なぜノミネートされなかったのかわからないという3つのプロジェクトについて、応募者側と審査員がライブ放送をするという仰天の企画が冒頭の放送で、リアルタイムで視聴していました。
さて番外編で見たこのプロジェクトに驚愕しました、何がすごいってリノベで、オフグリッドで普通に過ごせる建物ができているのはもちろん、それを改修するにあたって電動工具を現場に設置した太陽光パネルで充電して工事したという、、、
確かにやろうと思えばできる。だけど、そんな話見たことも聞いたこともない、恥ずかしながらそんな発想がなかったし、もしオーナーが思いついても施工者に勘弁してくれと言われるだろう。こだわりの度合いとチームで成し遂げた奇跡に強い興味を覚えたのでした。
そう感じたのは僕だけではなく、ノミネートからは漏れてしまったけれども、このままではあまりに惜しいということで急遽ほくほくに合った賞が「NEXT賞 創エネの家」としてつくられ受賞しました。
その後六花荘の受賞が決まり東京での受賞者懇親会で、ほくほくのオーナー斎藤さんと施工したチームとお会いしました。その際にここまでのこだわりを生んだプロジェクトの背景、きっかけを聞くことができました。
斎藤さんは現役の新聞記者。福島県に赴任していた際に東日本大大震災が発生、原発事故による悲惨な状況を目の当たりにし、これまで疑問を持たず電気というエネルギーを無尽蔵に使っていた生活と現代社会について考え、5アンペア生活と名付け従量電灯Aの5アンペア契約で生活するプロジェクトをはじめたそうです。そうした生活を何年か続け、断熱してすれば創エネすれば電力会社から電気を買わずに過ごせることを実証するためこのプロジェクトに至ったそう。
自身が発見した社会課題について、調べ考え仮説をたてて実行し、形にしたうえで検証する姿勢には非常に説得力がありました。深く共感しほくほくでの再会を約束したのでした。
さて寒い時期の訪問はかないませんでしたが、夏の最も暑い時期に訪問することができました。
斎藤さんが購入したのは、東京では一坪も買えないほどの価格だった築40年の古民家。
―八ケ岳エコハウス「ほくほく」プロジェクト―① 節電記者、築40年の空き家を買う | 朝日新聞 2030 SDGs (asahi.com)
冬は家の中でもキッチンの鍋に氷が張るほど寒かった家が、断熱改修によって電気・ガスを買わずに生活できる家に生まれ変わっています。
お邪魔したのは夏のピーク。でも100V 6畳用エアコンで家じゅう涼しく室内は快適、築40年の建物をリノベでオフグリッドにしていると聞いて想像するものととは全く違います。
あえての鉛蓄電池で組んだシステムは容量20kWhで、放電管理は10kWhを閾値としているそう。当日は雲が多めの空模様でしたが、合間から太陽が顔をのぞかせると、見ている間にわかるくらい残容量が増えていきます。
給湯は日本初の太陽熱温水器「チリウヒーター」によって賄っており、また暖房用に薪ストーブもあることがオフグリッドで我慢せず暮らせる秘訣ですね。
なんとリノベで山崎屋木工のトリプル!ウッドデッキに出るテラスドアのしっかりしていること。しかもガラスで景色が見えてかっこいい。
斎藤さんと仲間たちはこのほくほくを拠点に、体験宿泊、子ども向けのエネルギーワークショップ、大学生のフィールドワーク等に活用しているそう。
断熱とエネルギーの大切さを世に伝える、素晴らしい実例でした。ほくほくについては様々なメディアに掲載されています。YouTubeのリンクを貼っておきます。